照葉樹林文化シンポジウム in 綾〜いのちの森を広げよう〜
2008年6月1日、綾町文化ホールにて照葉樹林文化シンポジウム in 綾「いのちの森をひろげよう」が開催され、座談会「未来への種まき」に図師大酋長(ロキシーヒルの会会長)がパネリストとして出席しました。

座談会出席者は以下の通り(写真左から)。
・森山まり子さん(日本熊森協会会長)
・笹岡哲也さん(宮崎森林管理署長)
・前田譲さん(綾町長)
・図師哲雄さん(ロキシーヒルの会会長)
・古川裕貴さん(若者代表…宮崎大学学生)
・コーディネーター:郷田美紀子さん(綾の自然と文化を考える会代表)

約1時間10分の座談会の中でパネリストからは様々な話題・ご意見が出されましたが、その中からいくつかをご紹介します。

<森山まり子さん>
・森(奥山)を守るカギを握っているのは国民、市民。自分たちの足下にある自然をまず育てて行くことが大事。
・人の手が加わると自然は弱くなる。田んぼも整然と稲が植わっている風景はどこか人工的で不自然であり災害にも弱い。耕すと田の力が落ちるという研究をしている人もいる。畑にしても肥料などを入れずに自然のサイクルに任せていると土がふかふかになる、日本人は戦前の価値を全て破壊してきたが、今はそれを見直す時期に来ていると思う。
・人工林は人が管理するが、自然を作るのは自然だけ。人間は自然に生かされているという認識を新たにしなければならない。
・ここ(会場)には若い人の姿もたくさんあるが、物事を動かして行くのは若い情熱である。話だけに終わらせないでほしい。

<笹岡哲也さん>
・戦後拡大造林によって自然林が人工林に作り替えられてきたが、そのときは必要と思われることが時代が変わるとそうでなくなることがあり、人工林(針葉樹林)が正にそうである。我々は針葉樹林を作るノウハウは持っているが、照葉樹林は自然が作るもの。長い目で見て行く必要がある。
・これから世界的に木材の需要が高まってくるため、日本もなかなか輸入できなくなってくる。今こそ、日本の針葉樹林を有効利用していく事が大事。他の建材との競合もあるが、地球を守るためにも今ある資源を使いたい。そのための人工林拡大の必要はないと思う。
・宮崎には2000haの「切っても植えない山」がある。山を管理して行くのは経済的にも厳しいという現実もある。

<前田譲さん>
・もの(経済)が先か、人(心・道徳)が先か。本当は人が先である。日本は国土が森林主体の国であり、森には文化がある。
・有機農業は土が命。自然のサイクルを生かす農業であり、綾町はこの「あたりまえの農業」を30年以上も続けて来た。農業を中心とした一次産業は「命産業」である。一次産業が循環して行かないとだめである。持続可能な一次産業が望ましい。
・綾町は日之影町に続いて県内で2番目に「森林セラピー地域」の指定を受けた。昔から森に住む人は心が豊かであった。「心を豊かにする森林セラピー」を実践したい。
・綾町では里山の復元、健康林づくりを進めている。その一環として放置林を行政が管理するという取り組みを進めており、順調に成果が出ている。

<図師さん>
・50年間農業をやって来たが、「木を植えた男」というフランスの絵本に出会って森作りに取り組むようになった。しかし、それまで営んでいた養鶏場などを処分して山作りを始めたので嫁女(奥さん)には評判が悪い(笑)。通帳も取られてしまった。「男のロマンは女の不満である」(笑)。
・自然農については、インターネットなどの情報を元にある若者が訪ねて来て、(居候状態で)半年ほど一緒に過ごしたが、その彼に自然農のことを聞き実践するようになった。長く農業をやって来た身としては、やってきた農業を宣伝しなければならないのだが(笑)、自然にできたものを食べれば長生きできるような気がする。
・図書館でスウェーデンの「豊かな森へ」という本を見つけた。ロキシーヒルではこれをモデルにしている。すなわち「森を持つということは…(トップページ右上の文句)」である。森作りは楽しくなければならない。「あの山へ行きたい!」と思えるのが大事。森作りは人と人とのつながりも強くし、いろいろなことを学ぶことができる。自分にとっては森林が教授である。しかも自然の学校は授業料がいらない(笑)。

<古川裕貴さん>
・若い人が多いシンポジウムで少し驚いた。これをシンポジウムで終わらせないことが大事。周りを巻き込み、森のことを知って行動に移すことをしていきたい。
・「プラスα」というMixy上でのエコ活動団体(50名ほど)を立ち上げている。みなさんにも気軽に参加してほしい。

以上。

2008.6.3レポート